振動の基礎
日常生活の中でよく「振動」と言う言葉を耳にしますが、そもそも「振動」とはどのようなものなのでしょうか?
私たちの身の回りにある振動には、エレベータの振動、ドアの開閉時の振動、換気扇の振動、車の振動などがあります。ドアの開閉の振動は、ドアの開け閉めに伴う「物とモノ」がぶつかりあう振動で、特に衝撃振動と呼ばれています。一方換気扇からくる振動は、空気中を音として伝播してくるものもありますが、一部は物体を通じて直接身体に伝わる揺れとしても伝わって来ます。
振動は物体が動いた時に発生するエネルギーの変化を表したものと言えます。そのエネルギーは音として伝わったり、物体を揺れ動かす力として伝わったりします。物体が移動する時に発生させる力が「振動」という事になります。
「振動」には回転振動と、往復振動があります。
回転運動による振動
図1は一例として回転運動による振動を説明したものです。

図1. 回転運動による振動の例
回転体は回転機(ロータ)が軸受の上に固定されてある一定方向に回転します。
この時、ロータ上に不均衡な重りがあると外側に向く力Fo(これを遠心力といいます)が働きます。この遠心力の力を打ち消す様に軸受けには反対の力-Fo(これを向心力といいます)が働きます。この力が「振動」の源です。→ 軸受で発生する振動はこんな感じです。
一般的に、ロータは均一な質量を持つ金属で作られていますが、その金属の不均等性が振動を発生させる要因になります。
往復運動による振動
図2は往復運動(単振動)による振動の例を説明したものです。
図2. 往復運動による振動の例
加速度、速度、変位の関係
振動を測定する方法(関数)として、加速度、速度、変位があり、測定の目的に合わせて関数を選ぶ必要があります。ここでは、その関数である
- 振動変位 (Displacement) 略 DISP 単位 μmp-p、mmp-p
- 振動速度 (Velocity) 略 VEL 単位 cm/s、mm/s
- 振動加速度(Acceleration) 略 ACC 単位 m/s^2、 G (=9.8m/s^2)
の関係を説明します。
理解を容易にする為に、単振動(正弦波)を考えます。先の図2を参照して下さい。
おもりが静止している状態から変位D(一定値=-D)だけ引っ張って放すと、おもりは図で示すように上下に運動をします。(実際には空気抵抗や重力の影響を受けて最後には停止しますが、ここでは無重力で真空の状態と考えて下さい)このおもりの位置の変化を時間的な式で表すと、以下の式になります。
- 変位 X(t)=Dsinωt ・・・…(1)
- 速度 V(t)=Dωcosωt ・・・…(2)
- 加速度 A(t)=-Dω^2sinωt ・・・…(3)
ここで、ωは角速度と呼ばれ、ω=2×π×fです。(πは円周率で3.14159・・、fは周波数で1秒間の繰返し回数です。)
上式により、変位は周波数に無関係ですが、速度は周波数と比例関係にあり、加速度は周波数の2乗と比例関係にあります。仮に変位が一定で周波数が10倍に変化した場合を考えますと、変位で測定した場合では両者の振動は同じ大きさで表われますが、速度で測定しますと、周波数の大きい方が小さい方に比べ10倍の大きさで表われ、また加速度で測定した場合には、周波数が大きい方が小さい方に比べ100(=10^2 ; 10の2乗)倍もの大きさで表われます。
したがって、周波数が大きくなるに従い、変位、速度、加速度の順に関数を選択するのが有効な測定法です。図3は、それを模式的に描いたものです。
図3. 振動パラメータと振幅の関係
*変位(Dは周波数に無関係な定数)
振動の変位量を表し、動きの大きさに直接関わる特性値を表します。
周波数特性上は、周波数に無関係な特性値を示します。
回転体のたわみ量、ふれ量の評価に有効なパラメータです。
*速度(V=2πf×D)
振動する速さ~振動エネルギーの大きさを表し、機械の磨耗や、劣化の進展度合いに関わる特性値を表します。
振動診断用として有効な指標となります。
ISO振動評価基準が利用できます。 → ISO振動評価基準はこちら
周波数特性上は、10~1000Hz近傍での検出感度が高く表れます。
*加速度(A=2πf×V = (2πf)^2×D)
振動によって生ずる衝撃力の大きさに関わる特性値を表します。
軸受、ギアのきず振動等の異常検出に有効な指標となります。
周波数特性上は、1000Hz以上の高周波数領域での検出感度が高く表れます。
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